O.N.S MANUAL

日本人ならではの感性とトーン。
若手写真家・玉村敬太

日常の些細なものごとや、まだ名前も付いてないような微妙な情感、そこはかとない憂鬱さ。そんな日本らしい繊細な感覚を写真で表現するフォトグラファー・玉村敬太をフィーチャー。デート相手の女の子たちを続々とSNSに上げていく軽さの裏側には、退廃や死の意識が漂っている。日本に巣食う欧米信仰とは全く異なる地点から表現を行う、日本の若手クリエイターのリアルをお届けします。


まずはこれまでの簡単な経歴を教えてください。

子どもの頃から図工というかものを作ることが好きでした。将来は美大に行きたいと思っていましたが、高校の美術の授業で隣に座ったやつが、ものすごく絵が上手くて…。美大はこういう人が行くんだなと、圧倒的な差を感じてしまいました。それで自分は東京電機大学という理系の大学の工学部に進みました。
でもそこでの授業は、僕が目指した手でものを作る感じとはちょっと違いました。一方で授業とは別に写真部に入っていたのですが、展示した自分の作品が友達にすごいねと褒められたのがとても嬉しくて、写真って面白いなと思いました。
東京電機大学の4年生が終了した時に、日本大学芸術学部の写真科に編入し、新たに写真を学び始めました。そして日芸の3年時の冬に、写真家・鈴木陽介に師事しました。現在は大学を卒業し、鈴木のアシスタントをしながら個人としてもお仕事をしたり、作品を作ったりしています。
2016年に「1_WALL」というコンペンションに参加し、入選しました。

これまでに影響を受けたものごとは?

日芸在学中に、写真家・ホンマタカシさんの『たのしい写真 よい子のための写真教室』という本に出会いました。そこでは写真の歴史や見方がわかりやすく解説されていて、そこからアート写真に対する関心やアンテナが広がりました。その後、雑誌『DUNE』の編集長だった故・林文浩さんの日本のファッション写真に関する文章に大きな影響を受けました。

日本にいるとどうしても欧米の作風を模倣した作品になってしまいがちだけど、僕は日芸にいる時からそういう「欧米っぽいもの」が全然面白いと思わなくて、『VOGUE』とかも全く響きませんでした。映画も洋画より邦画の方が断然好きでした。やっぱりどこかで自分は日本人なんだという意識があって、もっと静かな心の揺れとか憂鬱さみたいな感覚の方がずっと響いてくるなと感じていました。
たとえば海外の映画だと、卒業パーティーを控えた女の子がどの男の子とペアになろうかしらとウキウキするみたいな場面がありますが、僕はそういうのに全く感情移入できませんでした。やっぱり文化が違うよなと思ってしまいます。それよりは、たとえば女の子と歩いている時の無言の微妙な空気とか、それこそ俳句ではないけど、些細なこと、言葉に表せないようなことを表現する方が自分にはすごく興味深いなと。そしてそういう感覚は、日本人ならではのものなのかなと思いました。だから自然と好きな写真家は日本人が多かったし、自分が撮る対象も派手なドラマ性があるものより、日常の微妙で繊細なものごとに惹かれていきました。そういったことをわかりやすく言葉にしてくれたのが、林文浩さんの文章だったんです。
師匠・鈴木陽介の『カレーライス』という写真集を見た時も、この感覚はまさに日本人のものだと感じました。どこか憂鬱でノスタルジックな独特のトーン。後で本人から聞きましたが、題名のカレーライスは、小学生の頃に帰り道でカレーの匂いが漂ってきた時のような、どことなく懐かしく切ない感じから付けられたということでした。


一方で、敬太さんのインスタには
かわいい女の子の写真もよく登場します。

もともとは、さっき話した電機大学時代の展示というのが、女の子の作品だったんです。その頃すごく遊んでいて、女の子とたくさんデートをしていました。その時に彼女たちの写真も撮りました。写真を撮らせてくれというのを会う口実にしていました(笑)。まあそれは今でもたまにあるんですが(笑)。で、それをまとめて作品として展示したんです。
今でもデートした女の子たちを撮ってSNSに上げたりしていますが、そうやって僕がいろんな女の子と会っていることを前面に出すと、僕と本気で付き合おうと思う子がどんどんいなくなるんです。やっぱりチャラいと思われるので。そうすると、女の子と会っても虚しさみたいなものが出てきます。おまえ何を言ってるんだと思われるかもしれませんが、僕はその虚しい感じとか憂鬱な感じが好きなんです。会っている時は互いに本気で向き合うけど、その後の虚しさとか、オレ何やってるんだろう?っていう、なんにもならない感じ。彼女でもないし、友達でもない感覚。まさに名前のつかない状態。
そういう時こそ、いい写真が撮れたりします。車のライトに照らされた変な落とし物を見つけて撮ったり。逆に彼女がいると、そういうのはなかなか撮れません。やっぱり幸せに満ち溢れてしまうので。だからすごく変な言い方だけど、そういう憂鬱な気持ちが作品のエネルギー源になっていたりもします。そういう時こそ、写真家としてはいい状態なのかなと。
そうやって自分の憂鬱さに向き合うことは本当に苦しいし、それを突き詰めると死に近づく感覚がありますが、突き詰めてみたい気持ちもあります。自分はもともと「死」というもの自体に興味があります。それは、自分のとても大切な人が躁鬱病患者であることも関係しています。昔から自分とはそんな遠くないところに死があると感じていました。

当O.N.S MANUALでは、ファッションスナップの撮影を担当していますね。どんなコンセプトで撮っていますか?

O.N.Sは海外の人にも向けられていることもあり、やっぱり一番撮りたいのは日本人っぽい人ですね。顔立ちが派手な人よりは、素朴で表情があまり顔に出ないような人とか。女の子なら、海外の大人の女性があまり着ないような子供っぽいピンクのセーターを着ていたり、ぬいぐるみを身につけていたり。
あとはわかりやすいブランドを着ているけど、その人らしさが出ている人も好きですね。でも逆に有名ブランドが似合っていない人も好きです。たとえばシュプリームを着ているんだけど、シュプリームに着られているような人。ブランドに飲み込まれている、みたいな。そういうのはファッションというより、写真としていいなと感じます。
撮る場所も、日本っぽい住宅の塀を背景にしたり、東京無線のタクシーの一部をさりげなく画面に入れたりしています。

この先、どんな作品を作りたいですか?

以前から撮り続けているものがあります。「仏花」です。とある交通事故の現場にいつも供えられている花があって、それが仏花とは思えないくらい毎回とてもきれいに生けてあってそれを撮り続けています。今は1年ほどお休みしていますが、いつか作品としてまとめたいと思っています。
それともう一つ、「塔」の写真を撮っています。これは実家のすぐ近くに立っている電波塔で、家に帰る時にいつも眺めています。いいことがあった時も、憂鬱な時も、それを見続けてきました。だから「塔を想う」というタイトルで作品にしたいと思っています。

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