O.N.S MANUAL

本で繋がる/ブックディレクター・山口博之

「ブックディレクター」という、ちょっと風変わりな職業があります。主な仕事は「本を選ぶ」こと。しかし何やら、それ以外にもあまり知られていない様々な業務があるようです…。今回はブックディレクターとして幅広く活動する山口博之さんが登場。本を選ぶだけにとどまらず、本を媒介にして物事を繋げ、メッセージを伝え、見える景色を変える。そこには、本のあらゆる可能性を駆使して事を成していくブックディレクター=“本使い”のマジカルな世界がありました。

ブックディレクターとは、どんなことをする職業でしょうか?

メインとなるのは本屋やライブラリーといった本がある空間を作ることです。本を選んだり、空間づくりのプロデュースやディレクションをします。ざっくり言えば、本というツールをどう使っていくかを考える仕事。作る空間は洋服屋から雑貨屋、カフェ、ホテル、病院まで多岐にわたります。ときには個人のライブラリーを作ることもあります。

それ以外にも僕は広い意味で本、編集にまつわる様々な仕事をしています。たとえば書籍の編集や執筆業、広告のコピーライターとしての仕事です。またブランドやキャンペーン、広告のコンセプトや考え方を作ることをベースとしたクリエイティブ・ディレクション全般も手掛けています。具体的にはいわゆるブランディングや百貨店などのキャンペーンビジュアルの制作です。

どのような経緯でブックディレクターになったのですか?

元々はファッションが大好きで、高校生の頃は超モードな服ばかり着ていました。今から見れば本当にコレ誰が着るんだよ?みたいな服です(笑)。実は本をきちんと読み出したのは18歳からで、以降はファッションよりはサブカルや学術的な方向へ興味が移っていきました。大学卒業後に青山にあった旅の本屋「BOOK246」に3年ほど勤務し、2006年にBOOK246を手掛けたブックディレクター・幅允孝さんが立ち上げた選書集団「BACH」に入りました。ここからいわゆるブックディレクターの仕事が始まります。

BACHでは9年ほど働きました。そのうちに僕個人への仕事の依頼もくるようになり、しばらくはBACHの仕事と並行してやっていましたが、両立させるのが大変になってきたこともあって、昨年独立しました。今の仕事内容は広がってはいますが、基本的にBACH時代と変わっていません。

これまでで印象的だったお仕事は?

会社に勤めていた時にはいろいろな選書仕事を経験させてもらいました。スルガ銀行のサロンスペース「d-labo」のライブラリーを作った時は、「夢」にまつわる本を1500冊選びました。銀行というとお金が目的になりがちですが、お金って本来は家を買ったり旅行したりするための手段ですよね。だからそもそもお金を何のために使いたいのか、なぜ借りたいのか、なぜ増やしたいのか、要はどんな夢を叶えたいのかということに思いを馳せる場所として本を選びました。

脳梗塞のリハビリ病院の本を選んだ時は、パラパラ漫画を一定の速度でめくることで脳と筋肉の連動をスムーズにする効果や、阪神タイガースが優勝した年の関連本を読むことで過去の記憶を刺激して脳を活性化するといった効果をリハビリに活かそうとしたコンセプトでした。あ、本ってこういう使い方もできるんだなと仕事を通じて新たな発見がありましたね。

クリエイティブ・ディレクションの方は、最近では三越伊勢丹の「花々祭2017」や「彩り祭2017」のキャンペーンビジュアルを手掛けました。シーズン毎のコンセプトを、どんな言葉でまとめて関係各者と共有し、どのクリエイターと組んでメインのビジュアルに落とし込むかというのを考え、制作する仕事です。

ビジュアルを作る仕事などは、本と直接的な関わりはありませんが、実は自分の中では全ての仕事が「編集する」というくくりで繋がっています。みんなに見えていないものやバラバラに見えているものを、ある特定の方向性やトーンで伝えるために整理して繋ぎ、絵や言葉にする。逆に繋がっていたものを一度バラすこともあります。大きく見れば全部が“編集”だなと。

ブックディレクターとして何か意外な業務はありますか?

意外かどうかはわかりませんが、ギャル向けの雑誌や女性誌、普段接点のないような趣味の雑誌やネットの記事などにも目を通すようにしています。自分がいいなと思ったものを違う趣味の人たちとも共有できるようにするための準備と言えるかもしれません。たとえば自分がいいなと思う写真集がある。でもそれはギャルの子たちには面白いと思ってもらえないかもしれない。そんなとき、ギャルが好きな本や人や物がわかっていれば、それらを間に配すことでギャルとその写真集の面白いポイントを共有できるかもしれない。もしかするとこちらも知らなかった異分野のおもしろさに気づくかもしれない。そんなふうに本来は繋がっていないように見える物事をゆるやかに繋げられるんじゃないかなと。

本は、人とコミュニケーションを図るツールにもなりそうですね。

そうですね。たとえばファッションデザイナーがいて、その人がある程度知っている人であれば、絶対にこの本の感じも好きだよなとか、あの本の辺りも興味を持つはずというのがなんとなくわかります。本が共通言語として間に入って話しができると、お互いの好きなものがわかって仲良くなりやすいというのはあるかもしれませんね。

O.N.Sのために何かお勧めの1冊を挙げていただけますでしょうか。

O.N.Sの名前の由来は「One Nice Shirt」とのことなので、ドイツの写真家アウグスト・ザンダーの『20世紀の人々』はどうでしょう。1900年前後の人たちを職業別に紹介したポートレート集で、その頃の男性はだいたいシャツを着ています。シャツはもともと肌着なので肌着的に着ている人もいれば、スーツスタイルでタイと合わせて着ている人もいるし、ベストと合わせている人もいる。でも多くのスタイルは、今の時代で着ても不自然ではない。時代によってファッションは大きく変わっているようで、実はあまり変わっていないことがわかります。そしてシャツには100年を優に超えるレベルの普遍性が備わっていることにも気付かされます。

ネットが発達した現代において、本にはどんな可能性があると思いますか?

ネットにはあらゆる情報が載っていますが、じゃあその信憑性は?となるとなかなか微妙な部分があります。そもそもその信憑性を自分で測る知識や情報はどこから得るのかという問題もありますよね。対して本というのは、基本的には多くの時間をかけて、いろいろな人の目が通った固定された情報として世に出されます。いろいろな本に触れること、ネットの開いた状態ではなく自分と本で1対1の関係で読み、考えることが日常的にできると言葉や情報に対するリテラシーというか、読解力と忍耐力みたいなものができてくると思うんです。与えられた情報に脊髄反射的に飛びつくのではなく、自分にとって有益な情報か、正確な情報かどうかを吟味し判別するための道具として、本は重宝されていいものじゃないかなと。

それと本を読むことで、ネット検索で辿り着く世界そのものを大きく広げられます。たとえば誰しもが検索するであろうAという言葉で検索すれば、誰がやっても同じ検索結果になります(グーグルなどは検索履歴等で変化します)。でもそこにBやCという言葉を付け加えたり、Aという言葉を別の表現に変えて調べることで検索結果を大きく変えられる。自分しか見つけていない検索結果の世界にも辿り着けるかもしれない。検索ワードを増やすにはその言葉を分析し、分解する力が肝となります。それを養うには本がうってつけなんです。とはいえ、最近ではグーグルでの検索がアフィリエイト目的のどうでもいいまとめやブログに飛ぶことも多いので、検索そのもののあり方を考えながら、ネットと付き合うことも大切そうです。

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