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「懐石」を世界に発信する:割烹・伊勢すえよし

都心の真ん中にひっそり佇む、全11席の割烹「伊勢すえよし」。店主を務めるのは、29才の若き板前・田中佑樹さん。彼は数年前、バックパックに醤油と昆布を詰め込み世界各地のレストランを回る、道場破りならぬ“レストラン破り”の旅を経験し、その後帰国して地元・三重県の特選食材を使ったこの懐石料理店を西麻布に開きました。オープンから2年が経った今や、伊勢すえよしは日本人のみならず多くの外国人から支持を集める都内屈指の人気店となっています。先日は世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」で、レストラン部門第1位を獲得。ここを訪れる人たちが過ごす“特別な夜”がいったいどんなものなのか、垣間見てみましょう。

なぜ和食の料理人を志すことになったのですか。

父親が三重県・四日市市で和食料理店を経営していて、僕も4才くらいの時から店を手伝っていたので、気づいた時には自分も料理人になって親父の店を継ごうと考えていました。それで高校を卒業して服部栄養専門学校に入学し、卒業後に赤坂の料亭「菊乃井」で4年ほど修行を積みました。

その後、世界を巡る旅に出たそうですね。

はい。カナダから始まってアメリカ、メキシコ、グアテマラ、ペルー、ボリビア、アルゼンチン、スペイン、モロッコ、フランス、ベルギー、ドイツ、ハンガリー、ブルガリア、トルコ、イタリアの16ヶ国をまわりました。旅先で何をしていたのかというと、バックパックに昆布と醤油を入れて各地の地元料理店に行き、お店に頼み込んで厨房でタダ働きさせてもらっていました。包丁に関しては、持ち歩くといろいろ問題があるので日本に置いていきました(笑)。
現地の方々と話をする中で、多くの人が「和食は好きだよ」と言ってくれるものの、よくよく聞いてみると、知っているのは寿司かラーメンくらいで、それ以上はなかなか出てきませんでした。中にはしゃぶしゃぶやお好み焼き、鉄板焼き、和牛なんかを知っている人もいましたが、それでも「懐石料理」という単語は出てきません。僕は懐石料理にずっと携わってきましたし、旬の食材を使って季節や伝統文化を表現する懐石は一つのエンタテインメントだと思っています。だからそれが全く認知されていないのをすごく残念に思いました。それで、自分はこんなふうに世界各地の料理を見せてもらったのだから、今度は自分が懐石料理というすばらしい文化を日本から世界にきちんと発信しようと決意したんです。

旅行では、現在お店を一緒に切り盛りしている奥さまも一緒だったんですか?

はじめは一人旅をしていて、彼女とは旅の途中で出会いました。ボリビアにウユニ塩湖という塩の湖があるんですが、そこに行くためにチャーターした車の中で彼女と乗り合わせたのが最初の出会いです。彼女も一人旅をしていました。ただ、そこからずっと一緒に旅をしたわけではなく、彼女は僕と逆回りだったのでいったん別々になり、帰国後に再開してトントン拍子で結婚することになりました。スピード婚ですね。この話はいろいろな人にしてきたので、だんだん恥ずかしがらずに話せるようになってきました(笑)。

帰国後、すぐにお店をオープンされたのでしょうか。

いえ、いったん三重県の実家に戻り家業を手伝いながら、休みをもらっては三重の様々な食材の生産地を回りました。そうして2年ほど開店の準備をし、2015年4月に、三重の食材を使った懐石料理店・伊勢すえよしを東京・西麻布にオープンしました。生産地巡りはお店をオープンしてからも続けていて、これまでに30~40ヶ所ほどを回りました。

三重の食材にはどんな特徴がありますか?

三重県は全国トップクラスの降水量で、かつ海と山との距離が近いのでミネラルがどんどん海に流れ出し、プランクトンが豊富に生息します。それで鳥羽や志摩などのリアス式海岸の地域では美味しい伊勢海老がとれますし、海藻を食べるアワビやサザエ、さらにはそれを食べる鯛などの白身魚がとても美味しいです。
北の方に行くと桑名という場所があります。ここは砂地なのでシジミやハマグリといった二枚貝がたくさんとれます。また熊野の方に行くと回遊魚の通り道になるのでカツオやサンマがとれます。三重県は南北に長いので、海だけ見てもこれだけ違うように、食材のバラエティーがとても豊かなんです。
1500年以上の歴史があり天皇の祖先が祀られている伊勢神宮が三重県・伊勢に作られたのは、海の幸から山の幸までありとあらゆる美味しい食材が集まる場所だったからとも言われています。自分の地元が食材の宝庫であることは、すごくラッキーだと感じています。

外国人へのアプローチにも力を入れているそうですが、たとえばどんなことでしょう。

「懐石料理」という文化をきちんと外国の方にも知ってもらおうと、「KAISEKI CUISINE EXPERIENCE」という英語の解説書をコース料理に付けています。「先付」や「八寸」「椀」といった懐石料理のメニューを英語で説明しているのですが、たとえば「米」のところには“一粒でも残したらバチが当たる”みたいなことも書いてあり、それを見た外国人の方は苦手な箸を一生懸命使って米粒を残さず食べてくれたりします。
またベジタリアンなど食制限がある方向けのメニュー開発も少しずつ進め、今ではベジタリアン、ビーガン、ハラルフレンドリーの懐石料理もご提供できるようになりました。たとえばベジタリアンやビーガンの方には、魚の刺身の代わりに、あおさ海苔のこんにゃくや湯葉をお出しします。お出汁もカツオやにぼしを使ったものではなく、昆布や舞茸をベースにした“ベジタリアン・ビーガン出汁”を別に作っています。
これは遠い夢かもしれませんが、海外の方々にも懐石料理をきちんと知ってもらい、「懐石料理はかっこいい」「美味しいだけじゃなく、すごく楽しい」と人気になることで、逆に多くの日本人の方々にも懐石に興味を持ってもらえるんじゃないかと思っています。僕も妻も多少英語が話せるし、和食の料理人で自分のような経験をした人は少ないと思うので、そこを強みととらえてチャレンジしていっています。

これまでで特に嬉しかったお客さんは?

先日来た方は日本を初めて訪れたアメリカ人だったのですが、昼に日本に到着してその夜にお店に来てくれました。その方が「今までの人生でこんなに美味しい食事を食べたことがない。日本に来て数時間でこんなことが起こってしまい、この後はいったいどうすればいいんだ…」というようなことをおっしゃっていて、とても嬉しかったです。
あとはやっぱりベジタリアンやビーガンの方が「こんなに素晴らしい和食を食べられるなんて…」と感激してくれる時は、がんばって準備した甲斐があったなと感じます。
日本人のお客さんでも、自分と同じような若い世代の人が結婚記念日に来てくれたり、あるいはお父さんの退職記念日とか、結婚前のお顔合わせの会でうちを使ってくれるのがすごく嬉しいです。懐石料理というのは、僕ら日本人にとっても日常的に食べるものではありません。だからそういった特別な日や“ハレの日”を彩る料理を提供するのは、料理人冥利に尽きるというか、気持ちを込めて作ろうと気が引き締まりますね。もちろん、普段から気持ちを込めているんですが(笑)。
そういえば、つい何日か前にもそんなことがありました! 外国人カップルのお客さんだったのですが、最後のデザートを食べた後に、なんと男性がひざまづいてサプライズのプロポーズをしたんです。それを見た女性は感激で涙を流しながら、『Yes!!』と答えていました。

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