O.N.S MANUAL

世界を食べ歩いたライターの、3つの忘れがたい思い出

キャリー・ジョーンズは、旅行とグルメのライターで、たびたび型破りな食事に遭遇している。
彼女は、「Food + Wine」、「Departures」、 「Saveur」、 「Travel + Leisure」といったグローバルな刊行物に定期的に寄稿をしているほか、自著本も話題を呼んでいる人物。世界各地を行き来し、食べて飲んで、積極的に地元の人と交流している。今回、私たちは、今までで最も思い出に残る海外での食事の経験について話を聞いた。

キューバ郊外の農場でテーブルを囲んで

正直言って、キューバで美味しいものにはなかなかありつけない。とくに旅行者にとっては。(芸術家の山頂の小屋で食べる豚のローストは特別。この話は次回にしましょう。)キューバでは、政府計画に基づく食料供給と政府経営のレストランばかりで、みなどれも同じようで、個性が全く感じられない。鶏、豚、豆だけを1週間食べ続けた後で、こんなにも野菜を渇望するなんて思ってもみなかった。サラダに欲望を覚える人なんてそういないと思うでしょ? ここでは、旅行者は、菜っ葉の切れ端すら見つけることができない。

ハバナから2時間離れたヴィニャーレスという町にレストランFinca Agroecologica El Paraisoを見つけたときの私はそんな状況だった。家族経営の農家兼レストランは魅力的なカルストの山頂と青々と茂ったタバコ畑のある印象的な谷を真っすぐに見下す青いポーチで、客を歓迎してくれる。周囲は、花とフルーツが豊かに咲き乱れ、そして最も重要なことに、野菜も茂っていた。しかもたくさん。

正直言って、キューバで美味しいものには
なかなかありつけない。

厳格な官僚主義者が野菜を全て取り上げてしまうなら、自身で育てるしかないのだ。El Paraisoでの食事はご馳走だった。ここで食べた最高のローストポークを思い出す。だけど、それに増して、ちりばめられた摘みたてのハーブ、薄くリボン上に切られたズッキーニのマリネ、新鮮なアボカド、グリーンビーンズの漬物といったポークと一緒に寄せられた野菜たちについて鮮明に思い出す。テーブルは12種類以上の料理でひしめき合っていた。こんなにも素朴な食べ物にここまで幸せを感じたのは初めての経験だった。


フィンランドのかがり火でいただくご馳走

この場所は、6月には絶対に暗くならない。フィンランド東部、ロシア国境付近の北カルヤラ地方である。実際、私は、木製の料理小屋に足を踏み入れた時、何日かぶりで暗闇を経験した。

燃え盛る火にあたりながら食べる、
冬の祝祭日のご馳走。

フィンランド人の夢はシンプルだと、ガイドのエヴァが話してくれた。森の中にある木製の小屋、伝統的なサウナ(フィンランド人はサウナに宗教的な畏敬の念を払う)、湖。調理小屋を持つのも悪くない。食事の為の小人の家を思わせるような小屋。「私たちは、根っからの森の住人なの」

夏ですら、まだ雪の固まりが地面に残っている。だから、かがり火の燃え盛る火は食事に活力を与えてくれる。エッグサラダが濃厚になったようなエッグバターがトッピングされたカルヤラのパイ生地、ジャガイモと詰め物をしたマッシュルームのサラダ、コーヒー、ブルーベリーケーキ、そして外では、豪勢にも真っ赤なサーモンが火にくべられている。燃え盛る火にあたりながら食べる祝日の食事、冬のご馳走。数時間後、食べるのにも飲むのにも飽きてきた真夜中近くに、私は、輝く星とちらつく雪を期待して小屋の外に出た。でも考えてみたらここはフィンランドの夏。私はサングラスに手を伸ばした。


東京・銀座の隠れ酒場

東京は常にシュールだ。24時間の間に、煙のたちこめる居酒屋でマグロの頸骨をかじったり、ニューヨークの私の家のクローゼットより狭いバーでシャンパンをすすったり、つやつやの肌と大きな目になってアニメのキャラクターに変身できるプリクラをとったり、馬と鶏肉の刺身が出てきたり…、そう刺身。(生の馬は食べても生の鶏はダメ。これが私のけじめの付け方だ。)

それから、上品な銀座地区の地下にあり、殆ど灯りのないBar MASQでとてつもないカクテルを飲んだ。こんな感じで、ほろ酔いというよりはかなり酔いどれに近い感じで、銀座のGinza Suki Barに行った。

これは現実?それともニッカの見せた幻?

ビンテージともいえる昔のリキュールやスコッチの広告がテープで貼られた壁の学生寮の階段を思い起こさせる小汚い階段を上がると、ポケットサイズのストリートアートで飾られた、豪華な銀座を見下ろせるくつろげるバルコニー付きのバーが出てきた。バーテンダーは寡黙にまずはアサヒビールを注ぎ、つぎにニッカウィスキーを注いでくれた。

たぶんウィスキーのせいだったと思う。私は普通のバーに座っていたつもりだったが、その次の瞬間にはバーテンダー自らが出演し所有しているラップのビデオを見ていた。彼はDJ MonStarというニックネームで日本のMilk Promotion Boardのために複数のビデオを制作している。クラブにいるチェーンにタトゥーの子ども達はその夜、ミルクの入ったシャンパングラスで乾杯をしていた。そしてそこに彼が登場。群がる牛に向かってラップを始める。M・I・L・K・・・、彼は日本語のラップに戻る前に英語を発しているようだったが私は理解できなかった。

これは現実だったのか、それともニッカのみせた幻想だったのか? その前に街で非現実的な時間を過ごしていたので、幻覚に陥ったのか? それとも私は本当に銀座を見下ろす5階建ての建物で日本人のバーテンダーが牛にラップをするのを見ていたのだろうか?

店から出たときにはすでに朝だった。夜明けはとっくに過ぎて、太陽の光が私の顔を熱く照らし、きちんとした服装の男女がオフィスへの道を急いでいる。後日、私は1つだけピンボケの写真を見つけた。そこには少し困惑顔の牛がスクリーンに映っていた。たぶん、これは現実だったのかもしれない。

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